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フェムテック業界をリードする、シスターフッドな繋がり。

Story 2024.1.26
ひとりひとりの女性が選ぶ固有な生き方をピックアップしていく「HERDAYS story」。今回は、WiLLUMiNA(ウィルミナ)CEOの幸村潮菜が、フェムテック企業のfermata(フェルマータ)CEOの杉本亜美奈さんを訪問。現在のフェムテックを取り巻く環境や展望について語り合いました。

世代を超えた経営者の出会い。

――お2人には「経営者」という共通項がありますが、そもそもの出会いは何だったのでしょうか。

幸村

確かロンドンビジネススクールの卒業生の集まりでしたよね。

杉本

そうです。私がちょうどフェルマータを立ち上げて、医療機器製造販売業のライセンス取得に苦戦している頃でした。その話をしたところ、幸村さんがキーパーソンを紹介してくださったんですよね。

幸村

若手から、しかも女性の優秀なグローバル人材が出てくる時代になったんだなと嬉しくなったのを覚えています。私もスタートアップを経験してきたから、サポートできるところがあれば応援したいと思って。

――まさにシスターフッドですね! しかし、お2人は年齢差を感じさせないというか、すごく近しい雰囲気をお持ちですよね。

杉本

初対面の時は大勢の人がいたのですが、幸村さんの印象だけはハッキリと覚えています。実は、行きつけのモツ焼き屋さんが一緒だったりもして。

幸村

そう、たまたまね(笑)。

杉本

お店で食事をしていて、「なんか聞いたことがある声だな」と思ったら幸村さんが偶然いらっしゃった、という出来事もありました(笑)。


なぜ今、フェムテックやヘルスケアに力を入れるのか?

幸村潮菜
幸村

ウィルミナ(旧かがやくコスメ)は、創業から40年間、化粧品メーカーとして丁寧に物づくりをしてきた会社なのですが、お客様のニーズに真摯に向き合うと、美容だけでは解決できない問題がたくさんあることに気づいたんですよね。事業領域を時代に合わせてアップデートするべきだと考えて踏み切ったのが、生理や更年期といったヘルスケア領域。亜美奈ちゃんの場合は、どうしてフェムテックだと思ったの?

杉本

ベンチャーキャピタルにいた頃に、自宅で妊よう性を調べるホルモン検査キットのサービスが投資案件として入ってきたんですね。当時は国内外を見渡してもそういったサービスがまだあまりなくて、「すごくおもしろい!」と思いました。ところが議論されることもなく投資を見送られたことに、「なんで興味を持たないんだろう?」と驚いてしまって。

幸村

亜美奈ちゃん自身は価値があると感じたんだね。

杉本

当時は27歳だったのですが、個人的に「私これ欲しい!」と思ったんです。でもヘルステックのVCに女性がほとんどいなくて、理解されにくいという現実にも気づきました。同時に、投資家を説得するぐらいの実力が私にはまだないということも。

そこで、まずは色々な人を集めて、フェムテック市場とは何なのかを議論する勉強会のようなものを始めたんです。フェムテック勉強会と呼ぶのは味気ないので、ついたその会の名前が「fermata(フェルマータ)」。

――それがフェルマータの始まりだったんですね。

杉本

勉強会を重ねていくうちにフェムテックという新しい分野に興味を持ってくださる方が増えてきたので、フェムテックに特化したファンドを作ろうと考えました。でも、当時、日本国内にはまだこの領域のスタートアップに投資できる企業が育っていなくて。起業して社名としてその名前を受け継いだ後、まずは市場の土台固めからする必要があるな、ということで今のような事業になっていきました。

fermata shop fermata直営店には生理ケア用品からプレジャーアイテムまで、フェムテック関連のさまざまな最新グッズが並ぶ。

ビジネスや制度改革の意思決定層に女性が少ない。

杉本亜美奈
幸村

フェムテックの投資案件がスルーされた経緯を聞いて思ったんだけど、ビジネスの意思決定層に女性が少ないんですよ。私が入社する前まで、化粧品会社の我が社ですら部長以上は全員男性でした。更年期を一つ取っても、苦しんでいる人がたくさんいるのにニーズとして捉えることすらなくて。だから、1年後には女性管理職比率を50%以上に変えた。

杉本

今でこそ日本のフェムテック市場は活気づいていますけど、2019年の起業当時は、好奇心の向くままに突き進む私を見かねて、「亜美奈ちゃん、気をつけた方がいいよ」と心配してくださる方もいました。私は「なぜ本当のことを言ってはいけないの!?」と空気感がわかっていなかったのですが(笑)。

――性や体について、女性が口にすることすら憚られるという風潮は今なおありますよね。

幸村

制度や法律も女性が意思決定層に少ない中で整備されてきていると思うから、制度を担う側がニーズを認識してくれるといいですね。どこの国にもある問題かもしれない。

杉本

既存のルールにはまだ壁を感じることもありますが、例えば、私たちが骨盤底筋トレーニングの商品を医療機器として出そうとなったときには、関係省庁も次第にニーズに理解を示し、ルールの新設に尽力してくれました。

――生理用品は卑猥なものという誤解をしている人がいるぐらい、過去においては教育面で足りない部分があったのかもしれません。

幸村

そう、だから、HERDAYSの取り組みとして、情報発信や学び場の提供を始めています。生理などのヘルスケアについて若い女性アスリートを対象にセミナーを実施しているのですが、チームの男性監督やコーチにも一緒に受けてもらうんですよ。同じチームに目に見えない辛さを抱えたメンバーがいるのだと知っておくことがチームビルディングの視点でも大事だと思ってやってます。

世代を超えたシスターフッドが実を結んで。

骨盤底筋トレーニングの商品を手に語る二人 ――先ほど骨盤底筋トレーニングの商品が話題に出ましたが、お2人の繋がりが形になった第一弾として2023年12月に業務提携を行い、フェルマータが販売している「ケーゲルベル」がウィルミナのブランド「Ibiza Beauty」でも買えるようになりました。化粧品メーカーのウィルミナとしてはかなりチャレンジングな取り組みだったのでは?

幸村

更年期前後に生じる悩みに「尿漏れ」がありますよね。女性が自分らしく晴れやかに生きていける社会づくりをビジョンに掲げるウィルミナとしては、化粧品事業を越えて取り組むべき課題の一つだと思うから、自然な流れでした。

――実は多いですよね、尿漏れで悩んでいる人。

杉本

産後に限らず、加齢によって骨盤底筋がゆるむことで尿漏れしやすくなります。「ケーゲルベル」は、その改善を目指してトレーニングするための「骨盤底筋訓練器具」として届出されている医療機器なんです。

――このベル型の重り… 結構な重量ですね! 鍛えるとキープできるものですか!?

幸村

私も試してみたけど、最初は軽い重さでも落ちてしまうからびっくりして(笑)。

杉本

ケーゲルベルは1回5分使えばいいのですが、シャワーを浴びたりしながら、週に3回ぐらい続けていると重りは徐々に増やせますよ(笑)。

――杉本さんにフェムテックの今後について伺いたいのですが、市場はまだまだ伸びそうでしょうか。日本には性をタブー視する風潮がまだあるようにも思います。

杉本

ブームに乗ると勢いを増すという傾向があるかなと思っています。この数年「フェムテック」というワードでトレンドが起こって認知が広がったように、第2、第3の波が来るんじゃないかなと。実際、最先端のテクノロジーに投資したいという大企業の声も増えてきていますね。

幸村

次に打ち出すおもしろいアイデアはあるの?

杉本

はい、色々考えていますので、楽しみにしていてください! 私、みんなで課題解決に向かっていくプロセス自体が好きなんです。アカデミアの世界にいた頃と根本的には変わっていないのかもしれません。

幸村

私ね、亜美奈ちゃんのような次の世代の頑張っている女性たちが生きやすい社会とは? そのために自分は何ができるのか? というのが私の問題意識。私の世代はビジネスで、「女性だから」という理由で悔しい思いをした人が多い。それでも、上の世代の先輩たちからたくさんのことを教わってここまで来れたから、次は亜美奈ちゃんのことを応援させてね。

フェムテック
杉本亜美奈(すぎもと・あみな)

fermata株式会社 CEO、DrPH/公衆衛生博士。幼少期をタンザニアで過ごし、イギリス、ドイツで学ぶ。東京大学修士号、London School of Hygiene & Tropical Medicine(英)公衆衛生博士号取得。医療経済、医療政策、公衆衛生のシンクタンクに勤めた後、Mistletoe株式会社に参画し、国内外の医療・ヘルスケアのスタートアップへの政策アドバイスやマーケット参入をサポート。2019年にfermata株式会社を立ち上げ、日本のフェムテック市場を牽引している。

撮影:土佐麻里子
取材、執筆:藤島由希

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