生理のタイミングをコントロールしたい人は誰なんだろうと考えた時に、アスリートなんじゃないかと思いました。そこで女性アスリートの現状を調べたら、ピルへの理解が低い・効果的に服用されていない、というようなことがわかったからです。(※1) INACに声をかけたのは、普段の発信からです。安本さんの著書「前例がないことをやってみる」だったり、SNSで発信されてることがリベラルなお考えのもと、女子サッカー業界を本当によくしていこうっていう思いが伝わってきていたため、アプローチさせていただきました。
僕はもうお話しいただいた時点で、ほぼ即決でした。スポーツの世界で、身体に伴うコンディションって、非常に注意を払ってはいます。だけど私は男性ですから、女性の選手にコンディションを聞くのはなかなか難しいと感じていました。そんな中、今回このお話をいただきまして、「これで、やっと選手たちも言いやすくなるのか。」と思いました。 言いにくいよね。やっぱりね。いくら社長とはいえ。
そうですね。(笑)
月経対策って、理解しようとしても、どうしても男性にはわからないものなんです。女性の方しかわからないし、女性の中でも個人差があります。そんな中で、今回の提携によって選手たちがより自分のコンディションを整えることに繋がればと思います。
実は、直近の試合で、「なんか今日全体的に重いな」っていうのを感じたことがありました。だけど、それを聞けるわけもなく、もしかしたら生理痛やPMSの症状が出てた選手もいるんじゃなかろうかとは思うんです。こういうことも事前に、監督・コーチがわかっておくということも必要だと思います。今後、練習でも、「今日はこの選手は控えにした方がいいな」というのが、必要になってくると思いますので、コンディションを整える意味でも、パートナー締結はぜひさせていただきたいと思いました。
日本の女性アスリートの間では、ピルがあまり浸透していないのが実情です。その背景としては、ピルに対する知識がなかったり、試合や遠征の移動がある中で病院に行くことが難しい、という状況があると思います。今回の取り組みでこのような懸念点が改善されて、ピルを服用する選手が増えていくんじゃないかと思っています。
私自身、過去にピルを服用していたことがあるんですが、身体とあまり合わず、やめてしまいました。当時は、低用量ピルは1種類しかないものだと思っていたので、薬を変えるという選択ではなく、服用をやめてしまったんです。服用している間は、身体のキレはまだいい方で、楽にプレイはできていました。ただ、生理痛が全くなくなることはなかったので、それが嫌でやめてしまったんです。今後、しっかり知識をつけていくことによって、女性アスリートがこの問題を解決していいパフォーマンスができるよう、私自身やINACの選手がモデルケースとなっていければいいなと思います。
今回、伊藤選手が快く「会見に出ます」って言ってくれたのはとても勇気がいることだと思います。伊藤選手のその勇気だったり、「なんとか変えていきたい」っていう意思を強く感じました。しかも、今日はゴールを決めた勝利試合でしたし(2023年3月12日(日)INAC神戸vs.N相模原戦、2-0で勝利)、いい日だったと思います。
試合当日に生理がきてしまい、「今日、身体が重かった」という話になったりします。いろんな症状を持った選手がいて、生理中でもコンディションが全然変わらない選手もいますし、身体が軽くなるという選手もいます。ですが、やっぱり、身体が重くなる選手の方が多くて、影響の出る人は多いなという印象はあります。
私は、PMSや生理の症状がかなり重く、頭痛、腰痛、腹痛の症状がすべて出る体質です。朝起きて、生理痛があると、そんな中でも練習に行かなきゃいけないので気持ち的にも憂鬱です。その上、身体もいいコンディションではない状態で、練習をやらなきゃいけないというのは、かなり負担があります。それが改善されれば、練習にも影響が少なくなります。また、試合と生理が被らないのが1番いいと思うので、今回の取り組みをしっかりと活用して、選手みんなのコンディションが上がっていけばいいなと思っています。
僕自身、チームスタッフはPMSや生理痛で、無理して会社に来なくてもいいよって思ってます。だけど、選手の場合はそうはいかないもんね。選手は、「試合には行かなきゃ」っていう思いがあるので、そこの指導者の理解を深めていきたいです。まず、選手である前に、女性としての部分を尊重しないといけないので。だから、監督・コーチ・トレーナーには一緒に学んでいってもらう。まず理解を深めて、そして選手が輝く舞台を用意するのが僕の仕事なので、そこに繋がればと思ってます。
そうですね。もう一度服用しよう、と何度も思っていました。でも、飲み始めた時の副作用がつらいことを知っているので、「また始めるのがちょっと怖いな……。」「シーズン中に服用を始めていいのかな」「オフ期間の時に慣らしていかなきゃいけないのかな」ということも考えていました。他の選手の中には、そもそも産婦人科に行きにくいと思ってる人もいたり、抵抗がある選手もたくさんいます。
産婦人科の病院に練習の合間を縫って行くには予約を取るのが難しくて、予約を取らなかったら長い時間待たなければいけないんです。そういう部分がすごく難しいなって思っていたので、それがなくなることによって、ピルを活用する選手が増えていけば本当にいいなと思います。
トップチームの選手はもちろん、10代の選手に向けて、HERDAYSの医師の方からお話しいただけないかと思っております。10代の選手個人だけではなく、親御さんにも相談・理解してもらえるようにサポートができたらと思います。よく、男性の監督なので相談できないっていう話を聞くんですが、このパートナー契約をきっかけに10代のうちに理解をつけていけば、将来の日本のスポーツ界にとってはいいんじゃないかと。
また、例えば、WEリーグの理念推進日「WE ACTION DAY」でお話をする機会を作るなど、選手も正しい知識を得ることによって、オープンに言えるような世の中になっていくことが1番大事かなと思うんですね。なんか、言いにくいもんね。そういう文化とか習慣作りっていうのは、取り組まないといけないと思ってます。それによって選手生命が伸びる可能性もありますし、それが1番、選手にとっても大きいと思いますし。
そうですね。産婦人科の先生だけだと、アスリート特有の課題を全部網羅しているわけでもないんですね。例えば、スポーツドクターの知見もありながら、婦人科の疾患を見れるというようなところが結構難しいんです。なので、領域を超えての先生方のご意見を賜りながら、女性アスリートが、どのようにピルを飲んでいけばいいのかという一般的なガイドラインの作成にチャレンジしたいと思っています。そして、選手・コーチ・経営者、チームにまつわる関係者など、サポートする人たちにも知ってもらえるように、活動していきます。